地方の小さな町に住んでいる、1人の少女、シオン=エルトリア=ヴィジェル。
錬金術師の父と、薬剤師の母、戦士を目指す姉と、4人で平和に過ごしていました。
ある日、自宅で見つけた一本の小剣。
ほんの出来心で手にしたその小剣を切っ掛けに、
彼女の好奇心は掻き立てられ、冒険の世界へと足を踏み入れていく事になります。
どこの世界にも、ごく普通に存在する多くの伝説や神話。
人はみな、それらを言い伝えながらも、
その全てはお伽噺に過ぎないと考えているでしょう。
そうした伝説に、彼女はたどり着く事が出来るのか。彼女が目指す伝説、それは-
冒険の扉は、今 ひらかれる。
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人物:シオン=アステリス=ヴィジェル
シオン=アステリス=ヴィジェル : 通称アス
ヴィジェル家の長女。年齢は21歳、身長は平均的で、短く、かなりの癖毛の赤髪。
男勝りな性格で、喧嘩は強い。口数は多くなく、しかしいつも冷静沈着で、信頼されている。
当初両親の反対は有ったが、性格的にも適材であった為、両親が折れる形で戦士となるべく修行中。
職 業:戦士修行中・長女
好きな物:肉料理、仲間達、討伐。
嫌いな物:弱い男、お喋り、勉強。
特 技:力は普通だが、剣技はかなりの腕前。
特記事項:修行の為、首都で1人暮らしをし、師に仕えている。
第一章:二人の研究(12)
お詫び:昨日アップした第11話ですが、誤って第12話も一緒にアップしてしまいました。
本日お送りする第12話は、昨日の第11話の後半部分です。
泉に着くまでの間にも、フィーはいろんな事を教えてくれた。方角の見方、時間の見方、果実や野菜など、食べられる植物の見分け方と取り方、探し方など。
「フィー、そんなにいっぺんに教えてもらっても、覚え切れないよぅ…」
「あはは、そんなに無理に覚えようとしなくてもいいよ。毎日行ってる内に嫌でも身体が覚えるから。」
そう笑いながら、やはり色々な事を教えてくれ、どんどんと奥へ進んでいった。
「エル。剣を構えて。」
突如、フィーが真剣な表情でそう告げる。
「え?何…?」
何か危険が迫っている事は、フィーの口調で判った。
「いいかい。ここからは遊びじゃない。教えながらやっている暇は無いから、よく見ておくんだよ。
それと-事が済むまで、自分の身は自分で守る事。こいつは…そうだな、危なくなったら手を大きく広げて、声を上げてごらん。けして目をそらしちゃいけない。」
フィーは、相手が何であるか、もう判っている風な口調だった。
「何がいるの?」
私はドキドキしながら、フィーに聞く。
「もう、来る! エルはここで、良く見ておきなさい。」
フィーはそういうと、突然走り出した。
私は訳が判らずに、ただ剣を構えて、フィーの後ろ姿を横目で追っていると、不意に物陰から人が飛び出してきた。え…? 人?
フィーと、不意に現れたその人影は、互いに絡み合い、離れ、再び絡み合い、そしてフィーが剣を振り下ろしたかと思うと、その人影の左腕が落ちた。
「ギャァァァー」
獣の様なうなり声をあげて、その人影は動きを鈍くし、手にもっていた短剣を取り落とした。
フィーより随分小さな…そう、ヤトよりもう一回り小さい身長のその影は、全身毛で包まれ-良くみれば、それは人では無く、ゴブリンだった。 フィーは、そのまま止めをさす。
「ふぅ。さぁ、エルおいで。」
フィーに呼ばれて近くに寄ると、フィーは何事でも無かったかの様に説明を始めた。ゴブリンの特徴、戦い方、弱点、気をつける事、etcetc。
そして、こう付け加えた。
「旅に出るって事は、こうしてモンスターと戦うという事だよ。エルに出来るのかい?もし、無理だと思うなら、もう今日で終わりにしてもいい。でも、もし出来ると思うなら、今日から早速、戦い方の訓練をしないとね。」
私は、それが本当に自分に出来るのか…少し悩んで、返事をしかねていた。
「まぁ、泉に着くまでの間、ゆっくり考えてごらん。」
フィーはそういうと、再び歩き出した。
第一章:二人の研究(11)
「ほら、エル起きて! フィーが待ってるわよ。」
「う~…ん…あと5分……」
「ダメッ。気が付いたらすぐ起きる。そうじゃないと、冒険者になんて慣れっこ無いわよ!」
「う…う゛~…」
あれから1ヶ月。朝は、毎日この調子…何かというと「旅に出たいんでしょう」「冒険者」「伝説を求めるのを諦めるの」と、やる事なす事その調子で。そりゃそうなんだけどさぁ…ふぅ。いい具合にこき使う口実を与えてしまった様な気がする。
「う゛~…おはよぅ…」
私は、眠い目を擦りながら何とかベッドから起き上がり、食卓へ向かった。
「おはよう。ほら、さっさと食べて。フィーはもう準備出来て待ってるわ。」
「え? 準備って何の? 朝からまた何か始めるの?」
私は、半分寝ぼけながら、辛うじていつもと違う事に気づいて聞き返した。
いつも朝の内にエリスの仕事の手伝いをしながら、薬草の知識を教わって。
昼からは、フィーの仕事を手伝って、様々な鉱石や道具の使い方を覚えて。
夜になると、二人と一緒に研究をしながら、世の中にある多くの伝説の矛盾点を教えてもらう。
…というパターンだったのに。
「あら、行きたくないの? 今日は狩に連れて行くんだってフィーは昨晩から張り切ってたんだけど。」
「えっ! 行くっ!! フィー!ちょっと待ってね!!」
いつも、フィーは一人で朝の内に狩に出て行ってたし、私は朝はエリスのお手伝いだったから、フィーの狩についていくのなんて初めて。 いっぺんに目が覚めて、慌ててフィーに声をかけた。
「ご馳走さまっ!!」
私は一気にご飯を掻きこむと、すぐに自分の部屋に戻って着替える。
「フィー、おまたせっ、行こう!」
「やっと準備出来たかぁ。よし、じゃあ行こうか。懐剣は持ったか?」
「え? 懐剣? いるの?」
「バカ、何も持たずに行って何が狩れるんだ? ほら、とっておいで。」
そっか、そうだよね。つい、いつもヤトと遊んでた頃の様に、身軽な服装で行こうとしたけど。今日は目的が違うんだ。
「でも、懐剣なんて持ってないよ? どれを取ってくればいい?」
「あぁ、グレイグの懐剣を持っておいで。」
「えっ、あんな高価な懐剣を使っちゃうの?」
私は、きょとんとして聞き返す。実際、あれは凄い価値だと思うし…もしも万一刃が欠けちゃったり折れちゃったりしたら…
「あはは、物に値段なんて関係ないよ。高くても使わなきゃ意味が無い。そして、あの懐剣はとても便利なんだよ。」
そうフィーがいうので、私は言われるままにグレイグの懐剣を取ってきて、懐に差した。
「よし、じゃあ行こうか。エリス、判ってると思うけど、今日は南の泉だから。」
「うん、気を付けてね。」
「あぁ、エリスもな。」
エリスとフィーは、そんな会話を交わした。
それを聞きながら、私は考えた。南の泉、かぁ。そんなに遠くないけど、水場の周りは様々なモンスターが集まってくる。私も、ヤトと遊びまわっていた時は水場の回りは避けていたから、そこに行くのは久しぶりだ。
「エル、ほらおいてくよ。」
「あっ、はーい。」
慌ててフィーの後を追いかける私。あれから、めったにヤトとは遊びに行けてないから、久しぶりの森だ。私はとってもわくわくしながら、フィーと共に泉を目指した。
目次 : Gift of Heaven
プロローグ Prologue
第一章:旅立ちへの序章
物置のナイフ
第1話
第2話
第3話
第4話
第5話
第6話
二人の研究
第7話
第8話
第9話
第10話
第11話
第12話
○○○○○○○
第二章:○○○○○○○○
○○○○○○○○○
※執筆予定は変更される事があります。
世界観:
通貨(カム)/経済
人物紹介:
ヴィジェル家一家
フェイタル=イコマ=ヴィジェル
シオン=エリスティー=ヴィジェル
シオン=アステリス=ヴィジェル
シオン=エルトリア=ヴィジェル
ヤト=フランクル=エクスダム
モンスター事典:
精霊
グレイグ
モンスター
オーク
グリズリー
ゴブリン(コボルド) スライム
その他: