プロローグ /prologue | Gift of Heaven ~神様の贈り物~

プロローグ /prologue

その時、世界は平和の内にあった。
町には様々な店が軒を連ね、広場は活気に溢れて、人々は安らかな人生を送る事が出来た。

国同士の小競り合いはあったが、その世界には怪物が生息しており、人同士の争いよりも怪物の討伐に追われていたので、大きな戦争も起きなかった。

どこの世界にもいる、小悪党や盗賊は数多くいたが、命を奪われる様な事は殆どと言って良いほど少なかった。

世界には怪物たちも多く棲んでいたが、集団で居る者達を襲うほどの事は滅多に無く、強い怪物ほど深い森や洞窟の奥に棲み、人は、町の中にいる限り安全だった。

血気盛んな若者達は怪物の討伐をゲームの様に楽しみ、腕に覚えのある戦士達は街道を行く商人達の護衛を生業として生活していた。


この世界には、幾つかの伝説が伝えられていた。
誰も登った事が無い山の頂上に棲むドラゴンの伝説。世界を作った神々同士の争いの伝説。深い森に潜むと言う精霊たちの伝説。どこかに存在すると言う神聖な武器の伝説。
見たと言う人、話を聞いたと言う人はいるが、どの話も信憑性に欠け、絵空事の様にも聞こえた。中には、それらの伝説を信じ、解明しようとする冒険者達も多くいたが、どこまでが本当でどこまでが嘘かは誰にも判らなかった。

その中で唯一つ、異色の伝説があった。
この世界には、星の欠片と呼ばれている、不思議な玉石が存在した。綺麗に磨き上げられた、色とりどりの玉石達。その表面には、文様と思える物が浮き出ていた。誰もがこの玉石を、人が作った物とは信じられなかった。
明らかに人の手が加えられたその玉石だが、地上に存在する他の全ての石とは異なる、その不思議な輝きは、誰の手にも作る事が出来なかった。文様が何を意味するのか、説明出来る者は居なかった。何故世界に散らばっているのかも、誰にも判らなかった。

いつしか、こんな話がまことしやかに囁かれた。星の欠片を全て集めた者には、どんな願いも叶えられるだろう-と。 その伝説を、人はこう呼んだ。
「Gift of Heaven.」・・・神様の贈り物、と。

第一章:物置のナイフ(1)