第一章:物置のナイフ(2)
「で、エル。今日は何が目的なんだ?」ヤトは切り株に腰を降ろしながら聞いてきた。
「そうそう、それなんだけどさ。」私は腰袋から、例のナイフを取り出しながらヤトに言う。
「こんなの見つけたから、切れ味を試してみたくて。でも、これって高いのかな?」
取り出したナイフを、ヤトに差し出した。
ヤトは暫くそれを眺めていたが、珍しくマジメな顔で口を開いた。
「こんなの、どこで見つけたんだよ?」
「うちの物置に転がってた。値打ちモノなの?」
ヤトの神妙さにびっくりして聞き返す。
「転がってたって…どの位の値打ちかは判んないけどさ…」
「なんだ、あんたの目利きもその程度か。」
ちょっとほっとして、そう言うと、すぐにヤトは言い返してきた。
「いや、最後まで聞けよ。俺の目利きは、親父ほどじゃ無いけどそこらの大人より凄いって認めてくれるだろ?」
「ん…まぁね。でも、これの値打ちは判んないんでしょ。」
「そうじゃ無くて、凄すぎて価値が想像出来ないんだよ。こりゃ、家の店じゃ扱えない位に高級品だぜ。」
「あはは、家にそこまで高価な物が有るわけ無いじゃない。そりゃそこそこ高そうには見えるけどさ。」
実際、家にそんな高価な物がある訳ない。冗談ポイ、だ。
しかし、ヤトはまだマジメに聞き返してきた。
「お前、このナイフ見て何とも思わないのか?」
「ん? 綺麗だよね。宝石みたい。こんな刃は初めて見たかな。」
私は、初めてマジマジとその刃を眺めた。
本当に綺麗な刃で、深い、深い湖の様な、緑とも青とも言える澄んだ色をしている。
「なんだ、判ってるじゃないか。なのに価値が判らないのか?」
「え? どう言う事?」
言ってる意味が判らずに、聞き返した。
「いいか? これは宝石みたい、じゃなくて、宝石か玉石かで出来た刃だよ。鉱石にはこんな色は無い。」
「へぇ~、これ、丸ごと宝石みたいな物なんだ。でも、それでも一万カム位でしょ? 大げさじゃ無いの?」
丸ごと宝石にしても、精々それ位だろう。
まぁ、それでも普通のナイフが100本、いや200本は買える値段だけど…
「バカヤロ。お前は、こんな刃に出来る程の大きさの宝石、見たこと有るのか? 水晶とかなら確かにこのサイズもあるけど、この色でこのサイズの宝石、聞いた事も無いぞ。」
「え…」
そう言われて、初めて気付いた。頭が真っ白になり、言葉が出ない私を尻目に、ヤトは言葉を続ける。
「それにさ、普通は宝石をこんな風に加工したら、刃先の薄い部分なんてすぐに欠けちまうぞ? 刃こぼれも無しにどうやってこんなナイフの形に加工するんだよ。」
「う……じゃあ、このナイフは何なのよ? 作れなきゃここにある訳が無いでしょう?」
「それだよ。ここにあるって事は誰かが作ったって事だ。でも、さっき言ったように、まずこのサイズってだけで凄い価値だぜ。それに、こうして加工するなんてとんでもない技術だよ。だから、想像も出来ないレベルの価値…そうさな、どっかの国の宝剣、ってレベルじゃないか?」
「うそ…そんなのが家にある訳無いじゃない!」
パニックになり、慌てて言い返した私。
「でもさ、事実ここにあるだろう。」
私は、それ以上言い返せなかった。本当にそんな価値のあるナイフなのか。もしそうだとすれば、何でそんな物が、家にあるのか。何で家なんかに…一杯考えて、頭が一杯になって、その場に呆然と立ちすくんだ。
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「そうそう、それなんだけどさ。」私は腰袋から、例のナイフを取り出しながらヤトに言う。
「こんなの見つけたから、切れ味を試してみたくて。でも、これって高いのかな?」
取り出したナイフを、ヤトに差し出した。
ヤトは暫くそれを眺めていたが、珍しくマジメな顔で口を開いた。
「こんなの、どこで見つけたんだよ?」
「うちの物置に転がってた。値打ちモノなの?」
ヤトの神妙さにびっくりして聞き返す。
「転がってたって…どの位の値打ちかは判んないけどさ…」
「なんだ、あんたの目利きもその程度か。」
ちょっとほっとして、そう言うと、すぐにヤトは言い返してきた。
「いや、最後まで聞けよ。俺の目利きは、親父ほどじゃ無いけどそこらの大人より凄いって認めてくれるだろ?」
「ん…まぁね。でも、これの値打ちは判んないんでしょ。」
「そうじゃ無くて、凄すぎて価値が想像出来ないんだよ。こりゃ、家の店じゃ扱えない位に高級品だぜ。」
「あはは、家にそこまで高価な物が有るわけ無いじゃない。そりゃそこそこ高そうには見えるけどさ。」
実際、家にそんな高価な物がある訳ない。冗談ポイ、だ。
しかし、ヤトはまだマジメに聞き返してきた。
「お前、このナイフ見て何とも思わないのか?」
「ん? 綺麗だよね。宝石みたい。こんな刃は初めて見たかな。」
私は、初めてマジマジとその刃を眺めた。
本当に綺麗な刃で、深い、深い湖の様な、緑とも青とも言える澄んだ色をしている。
「なんだ、判ってるじゃないか。なのに価値が判らないのか?」
「え? どう言う事?」
言ってる意味が判らずに、聞き返した。
「いいか? これは宝石みたい、じゃなくて、宝石か玉石かで出来た刃だよ。鉱石にはこんな色は無い。」
「へぇ~、これ、丸ごと宝石みたいな物なんだ。でも、それでも一万カム位でしょ? 大げさじゃ無いの?」
丸ごと宝石にしても、精々それ位だろう。
まぁ、それでも普通のナイフが100本、いや200本は買える値段だけど…
「バカヤロ。お前は、こんな刃に出来る程の大きさの宝石、見たこと有るのか? 水晶とかなら確かにこのサイズもあるけど、この色でこのサイズの宝石、聞いた事も無いぞ。」
「え…」
そう言われて、初めて気付いた。頭が真っ白になり、言葉が出ない私を尻目に、ヤトは言葉を続ける。
「それにさ、普通は宝石をこんな風に加工したら、刃先の薄い部分なんてすぐに欠けちまうぞ? 刃こぼれも無しにどうやってこんなナイフの形に加工するんだよ。」
「う……じゃあ、このナイフは何なのよ? 作れなきゃここにある訳が無いでしょう?」
「それだよ。ここにあるって事は誰かが作ったって事だ。でも、さっき言ったように、まずこのサイズってだけで凄い価値だぜ。それに、こうして加工するなんてとんでもない技術だよ。だから、想像も出来ないレベルの価値…そうさな、どっかの国の宝剣、ってレベルじゃないか?」
「うそ…そんなのが家にある訳無いじゃない!」
パニックになり、慌てて言い返した私。
「でもさ、事実ここにあるだろう。」
私は、それ以上言い返せなかった。本当にそんな価値のあるナイフなのか。もしそうだとすれば、何でそんな物が、家にあるのか。何で家なんかに…一杯考えて、頭が一杯になって、その場に呆然と立ちすくんだ。
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