第一章:物置のナイフ(1) | Gift of Heaven ~神様の贈り物~

第一章:物置のナイフ(1)

こんにちわ、シオン=エルトリア=ヴィジェルです。
私の冒険の切っ掛け-そう、あれは、いつもの昼下がりでした。物置で綺麗なナイフを見つけた事が、全ての始まり。そして…



「エル、待ちなさい! エルトリア!」
 当然、私は振り返りもせずダッシュで逃げる。いくらなんでも待てと言われて素直に待つなら、最初から逃げないっていうの。

何故私が逃げてるかって? それは、家業を手伝うのがしんどいからに決まってるでしょ。 家に居たら決まって色々手伝わされるんだもん。

 母には薬草を挽いたり、干したりする手伝いをさせられて、手がとんでもなく臭くなるし(洗っても取れないんだよ!)、父は父で鉱石を潰したり、炉の火の番をさせられたり…私はか弱い女の子だってのに、肉体労働なんてさせないで!
 と、物置に隠れてサボってたら、とても綺麗なナイフを見つけたから…やっぱり、こういうものって見つけたら試しに使ってみたくなるってのが、好奇心旺盛な少女のサガって物でしょう。



「ヤト、迎えに来たよ!」    私はヤトの家に入ると、2Fに向かって声を掛けた。
「エルか? またサボりかよ。」 2Fから顔だけ出して返事が帰ってくる。
「折角迎えに来てあげたのに。1人で行っちゃうよ~。」意地悪く言って、表へ出る。
「お、おい、ちょっと待ってくれよ!」慌てて追いかけてくるヤト。

ヤトの家は、商人をして稼いでいる。忙しい日はヤトも店を手伝わされたりしているけど、週に5日はぶらぶら遊んでいるので、早い話がする事が無くて暇なんだ。

「はぁはぁ、、、やっと追いついた…」
「おそかったじゃない。」横目でチラリと見ながら声を掛ける。
「だって着替えも何もしてなかったんだぜ。待ってくれって言ったのに。」
身振りを交えて大げさに言うヤト。呆れて足を止めた私は、彼の方に振り向いて、彼の目を見つめながら呟いた。
「こんな時間まで寝てたって言うの? 相変わらずねぇ・・・」
「そ…そりゃ……それより、今日はどこ行くよ?」
バツが悪そうに言葉を濁して、話題を変えたヤト。

「森に行こうと思ってさ。」私は再び歩きながら返事をした。
「え~、またかよ。スライムもいるし、前みたいに怪物に追いかけられるのは嫌だぜ。」
「だいじょーぶ、今日はそんなに奥に行かないからさ。」
「そうやっていつも言うけどさ、言った通りの試しが無いじゃん。」
「えへへ~、そうだっけ? ま、細かい事気にしないの! 男でしょ!?」
「そういうお前は無頓着過ぎるんだよな。」

そうしていつもと同じ会話を交わしながら、森へと向かっていった。

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