第一章:物置のナイフ(5) | Gift of Heaven ~神様の贈り物~

第一章:物置のナイフ(5)

っぷはぁ~、はぁ、はぁ、はぁ、、、


ヤトは肩で息をして、その場から動けずにいた。

そりゃ、そうだろう。全速力で走った後、すぐにスライムの襲撃なんて受けちゃ…

でも…今のは、なんだったんだろう…

確かに、スライムはそこにいた。けど、ナイフを突き刺した途端、みるみる内に小さくなって、そして、消えてしまった。どうして?


はぁ、はぁ、はぁ、、、
ヤトはまだ回復できずにいた。
私は、その場にへたり込んで、今あった事を考えていた。


暫くして、やっとヤトが声を出す。
「はぁ、はぁ、、、今、、、なにを、、、したんだ?」
「何って…スライムに、ナイフを突き刺しただけだよ。」
 そうとしか、答えようが無かった。


「なんで…スライムが消えたんだ?」
「・・・知らない。」

「それに、なんか、光って見えたけど、あれはなんだったんだ?」
「・・・判らない。」

「ナイフを刺しただけで、スライムが消えるわけないだろう?」
「・・・でも、消えたよ?」

「…いったい、どんな魔法を使ったんだ? お前、魔法なんて使えたのか?」
「何よ、私はナイフを刺しただけだもん。そんなの、このナイフに聞いてよ!」


私だって訳が判らないのに、どんどんと質問をされて、少しむっとしながらヤトにナイフを突き出して答えた。
暫くの沈黙。やがて、ヤトは立ち上がって、ナイフを受け取った。


「凄いな、このナイフ。このナイフ自体に、魔法でも掛かってるんだろうか。」
「…どうだろ。」
「これは、ひょっとするとひょっとして、本当に凄いナイフみたいだよな。」
「…うん…」
「なぁ、家に帰ったら、ナイフの事、聞くんだろう? 判ったら教えてくれよ。」
「うん、そのつもり。ナイフの事、判ったら、ヤトにも教えるよ。」
「頼むよ。面白そうだし。」
「うん。もぅ、帰ろう。今日は。」


私はもう色々ありすぎて、早く一人になりたかった。また、早くこのナイフの秘密を聞きたかった。
その後は、二人ともあまり会話をせず、真っ直ぐ家に帰った。


「じゃ、エル、また明日。」
「うん・・・ナイフの事、今日、聞いておくね。じゃ。」

 ヤトはあれから、私に気を使ってナイフの事に触れなかったけど、なんだか今日はヤトにも申し訳なくて、せめてナイフの事が判ったら、ヤトには絶対教えなきゃ-と思ったので、そう告げてわかれた。


「ただいまぁ~。」
「エルゥ!? 早かったじゃない。 勿論、今日サボった事、怒られるのを覚悟して帰ってきたんでしょう?働いて貰うわよ? 夕飯までまだ時間もあるし-」
 エリスティー…母は、かなり怒った口調でそう告げた。


「うん、判ってる…でも、エリスに聞きたいことが有るの。」
 エリスは、不思議そうな顔でこちらを見返しながら、返事をする。


「聞きたい事? うん、別にいいけど、じゃあ取りあえずそこにあるカゴの草を洗って。その後、仕事しながら話しよう。それで、いい?」
 私の気持ちを察してくれたのか、幾分柔らかい口調でそう言った。


「うん、ありがと。」
 私はそう言うと、かごを受け取って洗い場に行った。

 薬にする草を丁寧に洗いながら、ナイフの事、どう話そうか考えてた。

 勝手に持ち出した事、怒るかな。高価なナイフだし…それにしても、なんでスライムは消えたんだろう。このナイフに、どんな秘密があるんだろう。なんで、そんなナイフが家にあるんだろう。



「エル、まだ洗い終わらない?」
「あ、もう終わる~。ちょっと待ってて。」
 私は急いで洗い終えると、軽く水を切って、エリスの所に戻った。

第六話に進む (22日AM1:00 公開)