第一章:二人の研究(10) | Gift of Heaven ~神様の贈り物~

第一章:二人の研究(10)

フィー。
「なぁ、エル。僕たちが仕事の合間に、何の研究をしているか、知らないのかい?」
「知らないわ。なんの関係があるの?今、関係無いじゃない!」


エリス。
「ねぇ、聞いて、エル。この町で、書物を置いている家って何軒あるの?」
「えっ…それは・・・うちと、町長さんの所と、そう、ヤトの所にもあるけど・・・家が、一番多い?」


 問われて、初めて気づいた。本なんて、勉強は嫌いだし読むのが面倒で、もう何年も見ていない。

再び、フィーが口を開いた。

「うん、ヤトの所は売り物だったり、商売の知識だったりだよね。町長さんの所は、町に関する文献が沢山ある。それ以外で本を置いているのは家だけだけど、じゃあ、家の本は何の本だか、見た事があるかい?」
「え…」
 そういえば…何の本が置いてあるんだろう… たしか…小さい頃に見た本は…


「…もしかして、精霊の本?」

「やっと気づいたかい? エルは興味も示さなかったから、いい忘れたのかどうか判らないけど、僕たちが研究しているのは伝説についての研究なんだよ。」
「そんな…」
 なんで今まで知らなかったのか。いつも、二人で研究を続けていたのを知っていたのに。


「言っておくけど、伝説なんかの研究をしているのは、この国じゃ僕たち位のものだよ。だって、誰も本当の事とは信じていないからね。」
「なんで?なんでそんな研究を始めたの?」


 その問いかけには、エリスが答える。

「それは、私たちがグレイグと出会ったからよ。もっと色々知りたくて、趣味で始めたの。エルと一緒よ。」
「そうだったんだ・・・」

「だから、エル。伝説を調べる為と言うなら、旅に出るのは許可出来ない。その必要が無いからね。」
「そうよ。明日から、家の仕事をきちんと手伝いなさい。そうすれば、伝説の研究も、一緒に出来るわよ。」
 フィーとエリスが、交互に言う。


「そ…ぅなんだ・・・」
 私は、顔が引きつっていた。

ずっと、旅に出るのを駄目って言われているんだと思った。違うんだ。
というより、フィーとエリスがそんな研究をしていたなんて。私もそれを知りたいと思うなんて。。。


「どうする、エル。伝説を調べる為に、私たちを手伝うか-それとも、ただ当てもなく冒険者になるか。」
「・・・手伝わせて。」
 私は、それまで自分が知らなかった事が恥ずかしく、照れながらそう返事をした。


「いいわ。 じゃあ、エルトリス。そうと決まったら、明日からはビシバシと仕事にもこき使うからね!」
 エリスが強い口調できっぱりと言う。

「えぇっ・・・」

「口答えはしない! エルトリス、君は伝説を調べて、それだけで満足はしないだろう?」
「え?」
「きっと、君ならその後は、自分の目で見たいと思うはずだよ。」
 今度はまじめな顔でフィーが断言する。


「う…うん、そりゃそうだけど、それが?」
「その為に、エリスの持っている薬草の知識や、僕の狩りの手法とかも、勉強しておかないと駄目だろう。一石二鳥じゃないか。」
「う……」
 私は、結局その条件で、家の手伝いと、研究と-沢山こき使われることになってしまった。

 なんか、うまく言いくるめられた様な…気がする…