第一章:二人の研究(11) | Gift of Heaven ~神様の贈り物~

第一章:二人の研究(11)

「ほら、エル起きて! フィーが待ってるわよ。」
「う~…ん…あと5分……」
「ダメッ。気が付いたらすぐ起きる。そうじゃないと、冒険者になんて慣れっこ無いわよ!」
「う…う゛~…」

 あれから1ヶ月。朝は、毎日この調子…何かというと「旅に出たいんでしょう」「冒険者」「伝説を求めるのを諦めるの」と、やる事なす事その調子で。そりゃそうなんだけどさぁ…ふぅ。いい具合にこき使う口実を与えてしまった様な気がする。


「う゛~…おはよぅ…」
 私は、眠い目を擦りながら何とかベッドから起き上がり、食卓へ向かった。


「おはよう。ほら、さっさと食べて。フィーはもう準備出来て待ってるわ。」
「え? 準備って何の? 朝からまた何か始めるの?」
 私は、半分寝ぼけながら、辛うじていつもと違う事に気づいて聞き返した。

 いつも朝の内にエリスの仕事の手伝いをしながら、薬草の知識を教わって。
 昼からは、フィーの仕事を手伝って、様々な鉱石や道具の使い方を覚えて。
 夜になると、二人と一緒に研究をしながら、世の中にある多くの伝説の矛盾点を教えてもらう。
  …というパターンだったのに。


「あら、行きたくないの? 今日は狩に連れて行くんだってフィーは昨晩から張り切ってたんだけど。」
「えっ! 行くっ!! フィー!ちょっと待ってね!!」
 いつも、フィーは一人で朝の内に狩に出て行ってたし、私は朝はエリスのお手伝いだったから、フィーの狩についていくのなんて初めて。 いっぺんに目が覚めて、慌ててフィーに声をかけた。



「ご馳走さまっ!!」
 私は一気にご飯を掻きこむと、すぐに自分の部屋に戻って着替える。


「フィー、おまたせっ、行こう!」
「やっと準備出来たかぁ。よし、じゃあ行こうか。懐剣は持ったか?」
「え? 懐剣? いるの?」
「バカ、何も持たずに行って何が狩れるんだ? ほら、とっておいで。」
 そっか、そうだよね。つい、いつもヤトと遊んでた頃の様に、身軽な服装で行こうとしたけど。今日は目的が違うんだ。


「でも、懐剣なんて持ってないよ? どれを取ってくればいい?」
「あぁ、グレイグの懐剣を持っておいで。」
「えっ、あんな高価な懐剣を使っちゃうの?」
 私は、きょとんとして聞き返す。実際、あれは凄い価値だと思うし…もしも万一刃が欠けちゃったり折れちゃったりしたら…


「あはは、物に値段なんて関係ないよ。高くても使わなきゃ意味が無い。そして、あの懐剣はとても便利なんだよ。」
 そうフィーがいうので、私は言われるままにグレイグの懐剣を取ってきて、懐に差した。


「よし、じゃあ行こうか。エリス、判ってると思うけど、今日は南の泉だから。」
「うん、気を付けてね。」
「あぁ、エリスもな。」


 エリスとフィーは、そんな会話を交わした。
 それを聞きながら、私は考えた。南の泉、かぁ。そんなに遠くないけど、水場の周りは様々なモンスターが集まってくる。私も、ヤトと遊びまわっていた時は水場の回りは避けていたから、そこに行くのは久しぶりだ。


「エル、ほらおいてくよ。」
「あっ、はーい。」


 慌ててフィーの後を追いかける私。あれから、めったにヤトとは遊びに行けてないから、久しぶりの森だ。私はとってもわくわくしながら、フィーと共に泉を目指した。