第一章:二人の研究(12) | Gift of Heaven ~神様の贈り物~

第一章:二人の研究(12)

お詫び:昨日アップした第11話ですが、誤って第12話も一緒にアップしてしまいました。

     本日お送りする第12話は、昨日の第11話の後半部分です。


 泉に着くまでの間にも、フィーはいろんな事を教えてくれた。方角の見方、時間の見方、果実や野菜など、食べられる植物の見分け方と取り方、探し方など。


「フィー、そんなにいっぺんに教えてもらっても、覚え切れないよぅ…」
「あはは、そんなに無理に覚えようとしなくてもいいよ。毎日行ってる内に嫌でも身体が覚えるから。」
 そう笑いながら、やはり色々な事を教えてくれ、どんどんと奥へ進んでいった。


「エル。剣を構えて。」
 突如、フィーが真剣な表情でそう告げる。
「え?何…?」
 何か危険が迫っている事は、フィーの口調で判った。


「いいかい。ここからは遊びじゃない。教えながらやっている暇は無いから、よく見ておくんだよ。
 それと-事が済むまで、自分の身は自分で守る事。こいつは…そうだな、危なくなったら手を大きく広げて、声を上げてごらん。けして目をそらしちゃいけない。」
 フィーは、相手が何であるか、もう判っている風な口調だった。

「何がいるの?」
 私はドキドキしながら、フィーに聞く。


「もう、来る! エルはここで、良く見ておきなさい。」
 フィーはそういうと、突然走り出した。

 私は訳が判らずに、ただ剣を構えて、フィーの後ろ姿を横目で追っていると、不意に物陰から人が飛び出してきた。え…? 人?


 フィーと、不意に現れたその人影は、互いに絡み合い、離れ、再び絡み合い、そしてフィーが剣を振り下ろしたかと思うと、その人影の左腕が落ちた。


「ギャァァァー」
 獣の様なうなり声をあげて、その人影は動きを鈍くし、手にもっていた短剣を取り落とした。
 フィーより随分小さな…そう、ヤトよりもう一回り小さい身長のその影は、全身毛で包まれ-良くみれば、それは人では無く、ゴブリンだった。 フィーは、そのまま止めをさす。


「ふぅ。さぁ、エルおいで。」
 フィーに呼ばれて近くに寄ると、フィーは何事でも無かったかの様に説明を始めた。ゴブリンの特徴、戦い方、弱点、気をつける事、etcetc。


 そして、こう付け加えた。

「旅に出るって事は、こうしてモンスターと戦うという事だよ。エルに出来るのかい?もし、無理だと思うなら、もう今日で終わりにしてもいい。でも、もし出来ると思うなら、今日から早速、戦い方の訓練をしないとね。」


 私は、それが本当に自分に出来るのか…少し悩んで、返事をしかねていた。

「まぁ、泉に着くまでの間、ゆっくり考えてごらん。」
 フィーはそういうと、再び歩き出した。