怪物:グリズリー
グリズリー
大型の肉食獣で、モノによっては人の2倍ほどの大きさ。とても力が強く、凶暴で、人はその一撃でなぎ払われる程。また動きは非常に早く、馬ですら全力で無いと逃げ切れない程。ただし小回りは利かない上、知力は高く無いので息を止めてじっとしていれば、襲われない。(が、踏み潰される危険がある)
その体格は矢を防ぎ、剣ですら振り下ろすのでは十分なダメージを与えられない。全力で持って突き刺すか、特別に大型・重量の大きな鈍器で殴るのが良い。比較的、火を恐れるが、致命傷は与えられない。
【モデル】
実在の動物:グリズリー・ベア
容 姿:体長1.8m~、体重200~700kg。
属 性:猫目・熊科・灰色熊。
棲み家:北アメリカ北西部内陸(沿岸種はブラウンベア・ヒグマと呼び分ける)。
知 能:高くは無い。妊娠中・育児中の雌は非常に凶悪。
特 長:平地で時速65km、山地でも時速40kmを超える速度で走る。
好 物:雑食。肉食度は高いが、植物も多く食べる。
害 悪:特に熊の中でも凶暴だが、向こうから近づく事は稀。妊娠中・育児中の雌には要注意。
対 処:近づかない事、山道は声を出しながら歩く事、出会ってしまったら、死んだふりをする、大木の上3m以上に登る、坂道を全力で下るの何れか。
怪物:オーク
オーク
豚の様な顔をした人型の怪物で、身長は大人の人間よりやや大きい程度。森の洞窟に棲み、餌を求めて森を徘徊する。洞窟では群れで行動する。力は強く、凶暴だが、動作は鈍い。多くのオークは知能が低いが、知能レベルの個人差が激しく、若干の知恵をもつ者をハイオーク、統率力に優れた知識をもつ者をオークロード、簡単な攻撃魔法を使う者をオークメイジと呼ぶ。
【モデルとした神話】
出 展:トールキン「指輪物語」など
名 前:オーク/Orc
容 姿:豚の様な顔
属 性:亜人種
棲み家:森の洞窟に集団で住み、森を徘徊する。
知 能:言語や棍棒を利用する、腰布を巻く。
特 長:コボルド(ゴブリン)とは仲が良く、同じ集団で生活する事が多い。群れにはリーダーがいる。斧などの鉄の武器を持つドワーフとは仲が悪い。
好 物:鉱物などを好んで蓄積するが、持ち歩かない。
害 悪:集団性があり、棲み家である洞窟に進入するとしつこく襲われる。森で出会った場合も襲われるが、しつこくは追ってこない。
対 処:リーダーがいる場合、リーダーを倒すと統率が崩れる。
起 源:バビロニア神話の女神ボルキス→ギリシア神話の豚顔の男神ボルキュス→オーク
ローマ神話の冥府・死の神オルキュス(Orcus)→ Orc
備 考:リーダーはオークの事もあるが、大抵はオーガが群れに混じってリーダーとなっている。集団からはぐれたオークの場合は、人と結婚しハーフを作る例も存在する。
第一章:物置のナイフ(4)
「!!!!」
私は、精一杯の悲鳴を上げたつもりだったけど、声が裏返ってしまい、私の咽は音を発していなかった。
「逃げろ、エル!」
やっとヤトはそう叫び、私の所に駆け寄ってくる。
人の様な姿。しかし、顔は醜く、豚の様な顔をしている。手には棍棒をもって…
「オーク…」
一瞬、唖然とする私。でも、すぐに我を取り戻して、ヤトと一緒に一目散に走り出した。
「またこれかよっ!だから森はやだって!!」
文句を言いながらも走るヤト。
「だいじょーぶだって!オークはそんなに走るの得意じゃ無いからっ!」
私も走りながら、ヤトの文句に返事を返す。
「はぁはぁ…これがグリズリーとかだったら、もう追いつかれてるよっ!」
負けじとヤトが返してくる。
「グリズリーなら、死んだふりするのよっ!…はぁはぁ…」
お互い、息を切らしながらも、言い合いを続ける。
オークなら、追いつかれる事も無いし…それに、そろそろ、諦める頃だろう。そう思って、走りながら後ろを振り返った瞬間…
「ぶっ!!」
突然、隣を走っていたヤトは変な声を出したかと思うと、目の前で転ぶヤト。
幸い、オークはとっくに諦めた様で姿も形も見えなかった。私はその場に止まって、腕を腰に当てて仁王立ちをして、ヤトに向かって言った。
「なぁにしてるのよ、転ぶなんて!相変わらずどんっくさいわねぇ。」
「む…ぶ…むぅぅ…」
「?? どうしたの?」
ヤトはその場でじたばたしている。不思議に思ってヤトに近づくと、見事にヤトの頭にスライムが巻きついていた。
「ぶっ。ククク…」
笑っちゃダメなんだけど。苦しそうにじたばたしてるヤトが可笑しくて、それにスライムならたいして怖くはないし。一人の時に襲われるととても危険だけど、二人の時なら火を近づければ、すぐに離れる。
「ちょっと待ってなさいよ~。」
そう言いながら、マッチを探す。
「あれ??」
……無い!どうも、さっきオークから逃げる時に落としたらしい。
「あ~~どうしよっ;無いよ、火が無いよ…」
慌てる私。でも、そうしてる間にもヤトが窒息してしまう。どこを探してもマッチが見当たらない。
もう、ヤトも限界っぽい。考えてる間にも、時間は過ぎていく。私は、ふと持ってきたナイフに気がついた。でも、スライムは痛覚が無いのか、今からナイフで倒そうとしても時間が掛かってしまう…
でも、他に方法が無い。そうと決まれば、急がなければ…
力を入れすぎると、ヤトの顔まで傷つけてしまうし、かといってノンビリしてる暇は無い。
ブスッ。
ナイフを鞘から抜くと、思い切ってスライムに刃を突き立てた。
その瞬間、ナイフが光ったかと思うと…スライムは見る見る小さくなって行くのが見えた。
世界観:通貨(カム)/経済
この世界における流通は、物々交換によって成り立っており、紙幣やコインは発行されていない。
然しながら、全てを物々交換によって流通させる事は困難である上、物の価値も人によって代わってしまう為、非常に不便であり、流通が成り立たなくなってしまう。
この為、多くの取引では金や銀、宝石などの特に価値の高い貴金属を通貨代わりに使用している。特に、貿易の比較的盛んな2国がそれぞれ金・銀の産出量が多い為、多くの取引は金や銀を介して行われている。
元々金や銀、宝石などの相場は時期や場所によって大きく異なっていたが、14年前の三国合同会議によって、その流通性・利便性をより向上させる為に、金と銀に関しては固定相場を取り入れる事と決められ、世界の殆どの地域-特に当該三国の町々では全ての場所で金銀固定相場制の取引がされる様になった。
なお、宝石については、多くの種類が有る事や、加工によって初めて価値が出る事など諸般の事情で、金銀の様な固定相場は導入しない事となっている。
こうして定められた金銀通貨制度の単位をカムと呼ぶ。
1カムは、日本円にして凡そ10円である。
しかし、これはあくまで目安と考えて、日常生活に当てはめないで欲しい。
なぜならば、この世界はまだ狩猟や採取による食料調達が中心であり、栽培などは殆ど行われていない為に、食料自体の価格はかなり安い。(1食5~20カムで賄える)
が、同時に塩や調味料は非常に貴重な物である為に、調理済みの「料理」を食べようと思った場合には、一食が100~300カムと跳ね上がる。この様に、商品の値段は我々の世界とは大きく異なっているので、カムを日本円に換算して考えたとしても、恐らく混乱を招くだけである。
また、上記の通り、基本的には食料は自給自足であり、所持金が無くとも狩りをすれば食べる事が出来る…この為、1000カム程度しか蓄えの無い者もいるし、カムは殆ど持たずに、宝石などで蓄財している人も多い。
第一章:物置のナイフ(3)
「どうする? まさかそんなナイフを使って、傷でもつけたらえらい事だぜ。」
「う…ん。」
「とりあえず、今日は帰ろうか。」
そう言われて、やっと動く気になった私。
「ま、とりあえずさ。高価な物には違いないけど、本当の所どれ位の価値かも判らないしさ。」
歩きながらもずっと考えている私に、ヤトは言葉を続ける。
「帰って、聞いてみたらいいじゃん。エルの家がそんなにお金持ちとはおいらもビビッタけどさ。ひょっとしたら、誰かから預かってるとか、何かの褒美で貰ったとかさ。聞いたらどうせ拍子抜けする様な理由だよ。」
「そっか・・・そうだよね。うん。何も家に有るからって買える訳も無いし。そっかぁ。」
なんだか、どうしてそんな高価な物がって色々パニックになってたけど、どう考えても家が裕福な訳は無いし、かといってこんなの誰かから盗んだりってそんな両親じゃないし。 まぁ、姉なら若い頃に喧嘩のカタに-って言われても納得するけどさ(笑
そう考えたら、なんか変に考え込んじゃったのが馬鹿らしくなって、笑いがこみ上げて来た。
「そうだよ。うちがそんなに裕福な訳ないじゃん。あはははは。」
安心したら、笑いが止まらなくなっちゃって、前を歩くヤトの背中をバンバン叩きながら歩く私。
「いてぇ、痛いってばさ、エ・・ル・・・・」
そう言いながら振り返ったヤトは、突然言葉を飲み込む。
「ん?どうしたの?」
そう聞いて、ヤトの顔を見る。ヤトは呆然として、動きを止めている。
「どうしたの?」
もう一度聞き返しながら、ヤトの視線の先を追おうと、振り返りかけた瞬間、いきなりヤトは私の手を引っ張った。
「きゃぁ!」
私は、不意に引っ張られて、そのまま前へと倒れこむ。
バキッ!
背後で、木の枝が折れる音がした。
「いったぁ~い。何よ、突然…」
そう言いながら、倒れた時に落としたナイフを拾いあげていると、ヤトが返事をした。
「に…にげ、にげげげげ…」
何を言ってるんだか…そう思って振り返ると、そこには、へたり込んでいるヤトと、そして-
グァァァァ!
そいつの雄たけびが、耳をつんざいた。